決済端末トップカバーの特殊な2色成形 決済端末トップカバーの特殊な2色成形

技術力とチーム力で切り拓く新境地。
決済端末トップカバーの
特殊な2色成形

Project #04

海外のクライアントからのオファーは
当時の設備環境では容易ではない挑戦だった。

決済端末トップカバーの特殊な2色成形。

当時の設備構成では、そのままでは実現できない仕様だった。
別パーツでの組み立てという提案は受け入れられなかったため、
社内の技術を結集させ、新たな製造プロセスを構築する道へと舵を切った。

最適な成形工法を確立するための検証と改善、急な設計変更、
幾度となく繰り返される試行錯誤の日々。
それでも、チームで力を合わせ壁を越えていく。

常識にとらわれず創意工夫を重ねていく姿勢で、
情熱を絶やさず挑み続けた
ひとつのプロジェクトストーリー。

Project Members
  • Project Members 代表取締役 T.M

    代表取締役

    T.M

  • Project Members 営業技術部 T.H

    営業技術部

    T.H

  • Project Members 製造部 金型課 T.I

    製造部 金型課

    T.I

  • Project Members 製造部 成形課 S.T

    製造部 成形課

    S.T

  • Project Members 製造部 成形課 Y.N

    製造部 成形課

    Y.N

Chapter 1

海外で広く利用されている大手ブランドのクレジットカード決済端末。

その意匠性を高めるトップカバーが、今回のプロジェクトの対象だった。
単なる別パーツではなく、デザインとして色を変える「特殊な2色成形」で一体化させる必要があり、専用の設備を持たない当時の三優ライト工業にとっては、新しい発想と工夫が求められるプロジェクトだった。

始まりは、1枚の図面

T.M T.M

このとき手掛けた製品は、海外の大手ブランドが展開する決済端末で、その製造を担う海外の専門メーカーから当社に依頼が届いたものでした。

T.H T.H

一番初期の段階で図面をいただいた時から、お客様には「ボタンというわけではないけれど、あくまでデザインとしてここだけ色を変えたい」と言われていました。

T.M T.M

当時は2色成形の専用設備がなかったため、まずは2部品構造のものを作って直接話しに行ったんです。
「後からパチッとはめる形にしたらどうですか?」と提案したんですが、先方の資料にはすでに『2つのパーツに分けた組み立て構造は、クライアントの承認が得られなかった 』とハッキリ書かれていたんですよ。

つまり、大元のクライアントから「別パーツでの組み立てはダメだ、絶対に2色成形で進めるように」と、あらかじめ明確に指定されていたんですね。

S.T S.T

別パーツでの組み立てが一番現実的な方法だったので、両面テープで貼る方法や、裏まで形状を回り込ませて固定する方法など、なんとか別パーツで対応できないかと必死に考えたんです。
でも、製品の顔となる表側のパネルですから「外れたら格好悪い、2点で押さえるだけではダメだ」などかなり厳しい基準がありました。

あの時は皆で頭を抱えましたね。

T.M T.M

お話をいただいた際、資料に『2色成形』と書かれているのを見て、当時の当社にとっては新しい取り組みでしたが、三優ライト工業のスタンスから挑戦しない手はないと引き受けることを決断しました。
結果として、私たちの技術力を大きく引き上げるきっかけとなりました。

Chapter 2

2色成形に対応するため、当初は外部の協力会社に頼る案も浮上した。
しかし、製造が複雑で量産も必要なこの製品は、一貫して社内生産を行うことにより、生産上の柔軟性も確保でき、何より会社としての成長に繋がる。

チームはあえて、チャレンジングである「完全内製化」を決断する。

自社技術としての確立を目指した「完全内製化」への決断

T.H T.H

いざやろうとなった時、最初は専用の回転式2色成形機を持つ協力会社にお願いしようという話もありました。
ですが、トップカバーの裏側にはインサート金具を17個入れる必要があり、非常に複雑な形状で、かつ生産数も多い製品です。
これは自社で取り組むべき仕事だと判断しました。

T.M T.M

もちろん、外注する方法もありましたが、製造の自由度が利かなくなりますし、万が一そこで対応できなくなればお客様にご迷惑をおかけしてしまいます。
それに、単色成形機を使ったこの技術を自社で確立しておけば、2色成形や3色以上の多色成形など、今後の可能性が大きく広がると考えました。

T.H T.H

既存の単色成形機で実現できる方法はないかと金型メーカーに相談し、「DSI工法とサブユニット方式を採用しよう」という結論に至りました。ただ、そこからが大変でしたね。

サブユニットは非常に高額な設備です。
金型と設備を購入した時点で「あきらめる」という選択肢は消え、後戻りせずに突き進むしかありませんでした。

まずは、採用するサブユニットのメーカーを選定し、現地へ見学に行くことから始まりました。
本当にこの特殊な工法が実現できるのかどうかを見極めるため、遠方まで出向いて実際のデモ機を確認する作業を行い、それを金型の設計・製作と完全に同時並行の強行軍で進めていきました。

T.M T.M

そんな中、今回のユニットを後付けする際、当社の既存設備にそのまま取り付けようとしたところ、機械の扉に干渉して当たってしまうことが発覚したんです。

T.H T.H

1色目を成形したあと、2色目を流すユニットを付けようとしたら扉に届かない。
「それなら扉を半分カットしてしまおうか」という冗談交じりのアイデアが出るほど切羽詰まっていました。
もちろん安全面を最優先にするため、最終的には機械メーカーとも何度も協議を重ねてアレンジを加え、なんとか当社の設備に適合させました。

T.M T.M

当時は必要な成形機自体も間に合わなかったため、最初はレンタルで借りて調整を始めるなど、まさにスタートから手探りの連続でしたね。

Chapter 3

仕様のOKが出てから、ファーストトライの期限も非常にタイトなものだった。
実質2ヶ月弱というスケジュールの中で、現場ではこれまでの知見や枠にとらわれない工法で試行錯誤が繰り返されていた。

終わりの見えない試行錯誤

T.H T.H

設備の立ち上げ方が全く手探りの状態で、機械がうまく取り付けられない、ノズルが届かない、そして樹脂が漏れるなど、想定以上の調整作業が発生しました。
こうした設備を稼働させるのは初めての試みだったため、これほど課題が発生するとは予想していませんでした。

T.M T.M

初めて社内の130トン成形機にユニットを取り付けた時は、穴の位置が合わず、ブロックの溝を深く削り直すといった対応に追われました。
金型の温度は約130度にも達し、非常に高温です。金型調整の際は、火傷を防ぐためにテープを貼り、射出時の圧力で金型が開かないようクランプで締め付けたりと、現場全員で幾度となく検証を続けました。

S.T S.T

先に1色目の樹脂を金型の中で固めているのに、そこに高温の2色目を流し込むので、その熱でせっかく固まった1色目が溶けたり変形したりしてしまうんです。
そういうシビアな状態の中で、ギリギリのバランスを取りながら樹脂を流し込んでいくのが本当に難しかったですね。

Y.N Y.N

通常、プラスチックを綺麗に成形するには、ギュッと強い圧力をかけるのが常識です。
しかし今回の場合、後から流し込む2色目に強い圧力をかけすぎると、表面に凹みができてしまうんです。
その原因がなかなか分からず苦労しました。

最終的には、金型の中に溜まったガスをうまく逃がしつつ、絶妙な成形条件を見つけ出して、ようやく成功に辿り着きました。

Chapter 4

前例のない工法への挑戦は、社内にとどまらず金型メーカーとも一丸となった総力戦だった。
現場の声と技術的な視点をすり合わせ、互いに協力しながら一つずつ壁を越えていった。

チームで掴んだ突破口

T.M T.M

当初はエラストマーという素材で進めていましたが、対候性による変色や材料同士の密着性に関する課題を解決するため、より適している材料への変更を提案しました。
現場のリアルな声を聞き、技術部門と議論し、金型メーカーの意見も取り入れる。
そうした試行錯誤を何度も繰り返しながら、少しずつ仕様を固めていきました。

T.H T.H

ただ、その素材を採用したことで、今度は成形時に樹脂同士が干渉し、どうしても表面に段差ができてしまうという新たな壁にぶつかりました。
最初は金型メーカーの方々にこの状況を理解していただくのにも苦労したんです。

設計上の「寸法は合っている」と言われても、実際に成形するとズレが出る。
「こう修正してほしい」「それでは金型が開きませんよ」と、何度も意見をぶつけ合いながら調整を重ねました。

T.M T.M

そんな技術的な調整を続けている最中に、今度は「ロゴのデザインを変更したい」という設計変更の要望が入ったんです。
その部分の金型パーツだけを作り直して再びやり直すことになり、海外への出荷期限も迫る中で、非常に厳しいスケジュールで対応に追われました。

T.H T.H

クライアントからは「もう海外の製造拠点 へ送る飛行機の便が決まっているから、どうしてもその便に製品を乗せて持っていかなければならない」と言われて…。

S.T S.T

本当に毎日何かしらの課題が次々と発生しましたが、そこで立ち止まってしまうことはなく、そうした紆余曲折も経て、全員で一つひとつ着実にクリアしていきました。

その結果、最終的にお客様に喜んでいただける、しっかりとした製品を完成させることができたのだと思います。

Chapter 5

時間に追われる中での度重なる試行錯誤を乗り越え、ついに量産体制が整った。
スタートから約半年。
「できない」から始まったプロジェクトは、いつしか三優ライト工業に「2色成形の内製化」という新たな技術的飛躍をもたらした。

「新たな武器」と次なる挑戦

T.M T.M

当社にとって非常に高い目標を最初に掲げたのは私でしたが、メンバーが知恵を絞ってそれに応え、自社技術として確立してくれました。
道のりは簡単ではありませんでしたが、挑戦して本当によかったと感じています。

T.H T.H

普通の一般成形でやるものは競争相手がたくさん存在します。だからこそ、他社とは違うことに挑戦していかなければなりません。
最初は「できない」から始まりますが、どうすれば実現できるかを考える姿勢が大切です。

T.I T.I

我々金型部門も、普段は通常の単色射出成形の金型しか扱っていないため、2色成形用の金型に触れるのは初めての経験でした。
しかし、ここで試行錯誤した経験がある意味一つのノウハウになり、今後の応用にも繋がります。

自分の発想の転換にもなりましたし、結果として、新しい領域の仕事ができるようになりました。

Y.N Y.N

そうですね。

ただ、そもそもこれほど難易度の高い製品の依頼がなければ、今回の技術確立もありませんでした。
すべてを乗り越えた今だからこそ、笑って話せることですが…。

T.M T.M

今後はこの技術を一つの武器にして、お客様への新たな提案を行っていけます。
社内でまず「できる」という体制を確立できたことが、当社にとって非常に大きいですね。