メッシュフィルターのインサート成形自動化Project Story

創業当時からお付き合いのあったクライアントの要望で動き出した、メッシュフィルターのインサート成形自動化。最初は自動化での生産ではなく苦労の連続。どのように、そしてどのような想いで実現させたのか、プロジェクトの苦労ややりがいを振り返りました。

Project Members
  • Project Members 代表取締役 T.M

    代表取締役

    T.M

  • Project Members 製造部 金型課 E.K

    製造部 金型課

    E.K

  • Project Members 営業技術部 H.T

    営業技術部

    H.T

  • Project Members 製造部 金型課 T.I

    製造部 金型課

    T.I

メッシュフィルターのインサート成形自動化を目指すために

T.M T.M

そもそもメッシュフィルターの成形品はどこで使われているのか知ってる?

E.K E.K

実際に見たことはありませんが、ドアクローザーの中に組みこまれていて、中にメッシュが入っているフィルターですよね?

T.M T.M

そうそう。実際ドアクローザーで使われている部品。

H.T H.T

ドアがゆっくり閉じるときの仕組みですね。あれはクローザーの内部に油圧で調整する部品があって、そこに使われているのがこのメッシュフィルター。

T.M T.M

周りのリングは樹脂(プラスチック)で、中のメッシュはナイロンで成形している。今思えば、このプロジェクトも最初は全然うまいこといかなかったね。

T.I T.I

はい、最初はぜんぜんうまくいかずで自動化するのに本当に苦労しました。最初は予め加工したフィルターをひとつひとつ手作業で金型に組み込んでいました。

T.M T.M

そうそう。フィルターの位置を決めて金型から落ちないようにしないといけなかったからね。16個生産できる金型であれば、16個それぞれ決まった位置にフィルターを入れて、金型で挟み込んで成形してたね。でもフィルターの素材が柔らかいので安定した成形ができなかった。

T.I T.I

周りの丸いリングに合わせてメッシュフィルターを綺麗に切り取る作業も大変でした……。

H.T H.T

綺麗に丸くカットするのは現実的ではなかったね。

T.M T.M

それで思いついたのがブドウの房の形状を模してフィルターをカットすることでうまいことやろうとしたけどそれでもダメだったね。

H.T H.T

そうでしたね。ずれてしまうし、後処理がうまくいきませんでした。

T.M T.M

その後に思い付いたのが、樹脂だけ成形してメッシュを熱溶着させる方法。樹脂同士だから熱か圧をかけたらくっつくと思ったけど甘かった……笑

H.T H.T

難しいもんですよね。高温だと溶着できる可能性はあったんですけど。

T.M T.M

油が通るフィルターだし、メッシュが内部で取れてしまわないように密着力が必要。少し圧がかかると取れてしまう時もあって、品質が安定しなかったね。これじゃダメだってなった時にそれこそ竹内さんや梶原くんに相談したことを覚えているよ。

試行錯誤を繰り返して自動化実現へ

T.M T.M

トムソン型でフィルターの丸い部分だけを型で抜いて、フィルターをキュッと吸着、それを金型に入れて成形してみたらうまいこといったよね。

E.K E.K

そうでしたね。当初ネックになっていた問題は解決できました。が、それでもトムソン型でも問題が多発しました。うまくフィルターが抜けないことも多かったと思います。

T.M T.M

試行錯誤を経て最終的にはレーザー加工でフィルターを切り抜くことになったね。これでフィルターの加工はできるけど、今度はそのフィルターを金型にセットすることがとても難しかった。そこをクリアしないと自動化できない。

E.K E.K

そこで新たな金型を作りましたね。

T.M T.M

その金型も何度改良を加えたことか。

H.T H.T

いろいろ変わりましたもんね。途中から……(笑)

T.M T.M

成形品も小さいものだったから大変でしたね。ゲートのサイズ(樹脂が入っていく部分のサイズ)や、樹脂が流れる部分の形状とかいろいろ問題が続いたよね。

E.K E.K

それこそ僕が入ったタイミングは金型ができたばっかりの時だったので、そこから4~5年調整しながら……(笑)

H.T H.T

ちょっとずつちょっとずつ進化させていったよね……

E.K E.K

はい。地道に金型と向き合うことで実現できました!

T.M T.M

そうだね。実現に向けて、社内の営業課と成形課が意見やアイディアを出し合いながらこのプロジェクトに向き合ってカタチにできたのは非常に大きな成果だった。

H.T H.T

そうですね。製品として安定した供給ができるようになったのは間違いなく成形課の協力があったからこそ。じゃないと実現できなかったと思う。

初の試みとなる「フィルターを吸着して金型内部に配置する」という自動化

T.M T.M

吸引する対象物のフィルター、それがきちんと吸着して掴めているのか分かりづらいし、金型の中に運んで所定の位置に配置すること自体が初の試みでした。

H.T H.T

逆噴射させて配置するということは過去にありましたけどね。

T.M T.M

吸引力を倍にしてみたりとかもしましたよね。

T.I T.I

あー、そんなこともありましたね(しみじみ……)。機械の前に対象物を置いて、ふぅっと空気を吹きかけて浮かせて入れることを考えたりもしました。薄くて軽いフィルターを掴む時にどうしても静電気が発生するということもシビアな条件でした。

H.T H.T

初の試みだからこそ、今思えば課題も多かったよね。フィルムのカット、金型のカット、成形時にフィルターを入れるっていう工程ね。

T.M T.M

確かにね。それぞれやっぱり課題が多かった。金型課は日々トライアンドエラーでなんとかできましたって感じ。フィルターをインサート成形で入れるのも吸引力を調整したり静電気を除去したり、試行錯誤を繰り返してなんとかできるようになってきた。さっきも言ったけど、やっぱり綺麗にきっちり丸くフィルターをカットする工程がどうしてもうまくいかなかったよね。トムソン型できっちり抜いていたけど安定しなかった。

E.K E.K

いろいろ試しましたね。それでもうまくいかなかった。

T.M T.M

そうそう。そこで最終的に辿り着いたのがレーザーによる加工。最初は素材が焼けてしまうかなと思ったけど、テストしてみると焼けずに綺麗に切れた!やっと課題が克服できたって感じだったね。

H.T H.T

あの時T.Mの「レーザーで切れるかな」という発想がなかったら、実現してなかったかもしれませんね。レーザー加工機の設定を調整したり、工場内の設備レイアウトを調整したりと。機械を作ってくれているメーカーさんと成形課の協力があってこそ実現できたと思います。

T.M T.M

ほんとにね。最初は100×100くらいのフィルターメッシュの素材を重ねて、それを1枚ずつトムソン型で抜いていた。でも出来上がったものを見てみたら全部切れていなかったとかね……。

H.T H.T

ありましたね……。ほんと最初はすべてにおいて成功確率が低かったですよね。

E.K E.K

最低でも1回のインサートで12個は欲しかったので、うまくいかなかった時は金型に直接手で入れてたりとかね。

T.M T.M

ほんといろいろなことがあって、何とか最終的にカタチになったね。

この技術を糧に

H.T H.T

初期から考えると、まぁ10年はかかっていないと思うけど、現行の形に落ち着いたのはここ3~4年ですね。

E.K E.K

そうですね。初期からだいぶ金型の形状も変わっていると思います。

T.M T.M

それこそメッシュフィルター1個だけとかならどの企業でもできるかもしれないけど、多くの個数を素早くやるとなったら、自動化にしないと品質も安定しないし難しい。

T.I T.I

そうですね。それこそインサート成形の自動化に取り組み出したのも15年前くらいからでした。

T.M T.M

今と比べたら機械の台数も半分くらいの時でしたね。昔は汎用樹脂を主に扱っていたし、自動化や機械化を進めていく中でインサートやエンプラもするようになって。 まぁ、これからも自動化機械化に力を入れることで安定した供給にも繋がるし24時間稼働で生産性も向上できるので、まだまだ力を入れていきたいね。

T.I T.I

そうですね。クライアントから相談をもらった時もそうですけど、最初からできないって決めつけて何も挑戦しないのは三優ライトらしくないと思うし、これからも試行錯誤しながらいろいろと取り組み続けたいですね。

H.T H.T

失敗あってこその!

T.M T.M

失敗だらけやったけどね(笑)

H.T H.T

やっぱりこういうプロジェクトは社内のいろんな部署が絡み合って意見やアイディアを出し合わないと実現できないなと思いました。あと、せっかくみんなで生み出した技術なので、大事にしていきたいですね。

E.K E.K

私は途中参加でしたが、最後の最後、金型に関係した問題とフィルターがうまく切れない問題を任せてもらえて原因究明と解決に向けて貢献できたので非常に良かったと思っています。レーザー機を使って成形品を作るなんてなかなか経験できるものでもないですし、ほんと参加したタイミングからすべてがいい経験に繋がったと思います。

T.M T.M

確かに何かあったら率先してメーカーさんともやり取りしてくれたよね。 改めて思うけど、今回の取り組みがあったからこそ新しい技術に挑戦できたし、今後フィルターの相談がきても臆することなくできる自信にもなったよね。過程ではほんといろいろあったけど、みんなの協力があって諦めずにやり切れたっていう事実が一番大きな収穫になったね。